高卒就活独自の制度「1人1社」制、見直しに向けて動きだす!
高校生の就職活動は、大学生と違っていくつかルールがあります。そのひとつが「1人1社」という制度。「志望届の提出は1人1社のみ」という長年にわたるルールを見直そうという動きが出始めました。近年の人手不足の深刻化を受け、大卒採用と同じように、高卒採用も自由に進めたいという要望が企業から出ているためです。厚生労働省と文部科学省は、検討会議を立ち上げ、2020年をめどに意見をまとめるとしています。
「1人1社」のルールとは?
「1人1社」制とは、企業がハローワーク経由で学校に提出した求人票から、高校生が先生や家族と相談しながら選考し、応募先を1社に絞って志望届を提出する仕組みです。高度成長期、学業の優先を考える国と確実に採用したい企業、生徒を安定して就職させたい学校などいろいろな事情を汲んでできた制度です。
「1人1社」制のメリットは、高校生が就職活動に時間を取られず、学業に専念しやすくなることです。基本的に内定辞退のケースが少ないので、確実に人材を確保したい企業にもメリットがあります。
一方、デメリットは離職率の高さの一因となっていることでしょう。高卒生の入社後3年以内の早期離職率は、約40%。大卒就職者の早期離職率、約30%を大きく上回ります。高校生の場合、学校に送られた多くの求人票の中から、応募する企業をたった1社に絞り込まなければなりません。高校生にとっては選択肢が限られ、入社してからのミスマッチが起きやすいのが現状です。
高校生にとってはチャンス?!
メリット・デメリットの両方がある「1人1社」のルール。学校側は、この見直しに慎重な意見が多いようです。厚生労働省と文部科学省が実施したアンケートで、ルール継続を望む高校は74.1%。見直しに賛成の高校はわずか4.8%にとどまりました。確かに、応募できる数の制限をなくせば、学業に影響し、高校生の負担も増えるかもしれません。
しかし、1人1社制の見直しは高校生にとっては、可能性を広げるチャンスでもあります。最近では、高校生と積極的に高卒採用を希望する企業とを橋渡しようという動きが広がっています。求人票だけでは分かりづらい仕事の様子や、そこで働く先輩たちの生の声などを掲載するサイトも多くあります。高校生が自ら情報を収集するチャンスが格段に増えているのです。
高校生が自主的に情報を得ることで、選択肢は広がり、より明確な意志を持って就職先を選べるようになるでしょう。その結果、長年の懸案事項であるミスマッチによる早期離職も防げるのではないでしょうか。
高校生を守りたいという願いから作られた独自の就活ルール。高校生を取り巻く環境が激しく変化する今、少し立ち止まって考え直す時期にきています。高校生と一番身近に接する機会がある先生方、この問題をどう考えますか?