高校生の就職活動には、いくつか暗黙のルールがあるのをご存知ですか?大学生の就活とは違い、高校生の就活は生徒を守り、学校生活に支障をきたさないための独自のルールが存在します。
ルール①限られたスケジュール
高校生の就職活動は、例年7月1 日の求人票提出から始まり、9月5日から応募書類の提出。9月16日から採用選考(面接)が始まり、選考から概ね1週間以内に内定が出るなどスケジュールはとてもタイト。大学生の就活とは違って、短期決戦となります。
学校生活にあまり影響を与えないように、と考えられたルールではありますが、求人票提出が解禁になってから面接までの期間が短すぎて、高校生が行きたい企業を比較したり、検討する時間が少ないのが現状です。
ルール②一人一社制
基本的に、9月5日から10月1日までは「応募は1人1社だけ」というルールです(秋田と沖縄以外)。学校側が、学校内の生徒を競合させることなく、公平に就職先を見つけ、内定率を高めるのが目的です。
平成14年以降、検討を重ねて「10月1日以降は1人2社まで応募・推薦を認める」と申し合わせる地域も出てきましたが、9月5日から10月1日までの期間は1人1社という仕組みに変更はありません。
会社見学会に参加できる数も限られていることが多く、限られた選択肢の中から決めなくてはならないのが現状です。
ルール③学校推薦
「学校推薦」とは、高校生は学校を通さなければ、企業に応募できないというルールです。そのため、高校生は、学校に届く求人票を見て応募先を決めます。求人票のフォーマットはハローワークで決められているため、情報も限られています。また、求人の業種も限られているので、高校生にとって、「本当に自分がやりたい仕事」を探すのが難しいのが現状です。
高卒就活ルールのメリット
上記3つのルールは、「生徒」・「企業」・「学校」それぞれにメリットもあります。
・スケジュール→高校生は、学校生活と就職活動を両立しやすい
・一人一社制→基本的に内定辞退がないので、企業は内定者の数が把握できる
・学校推薦→学校と企業の間に信頼関係が築けるので、不況の時も生徒を採用してもらえる
高い内定率の一方で、早期離職者が増加
H30年度の高卒生の就職内定率は98.1%(文部科学省発表)と、とても高い数字になっています。高校生を守る目的で作られた就活ルールがうまく機能しているように思えます。
しかし、一方で、早期離職者が多いという問題点も。高卒者の入社後3年以内の離職率は39.3%にのぼり、大卒者の31.8%を大きく上回っています。入社後1年目の離職率も18.2%で、大卒者の11.9%よりも高い数字です。
主な原因は、やはりタイトなスケジュール、一人一社制のしばり、学校推薦による選択肢の少なさによるミスマッチ。現在の就活ルールは、高卒就職生を守る一方で仕事探しを急がせる「諸刃の剣」なのかもしれません。
ルール改正にむけて新しい動きや、企業の工夫も
この問題を解決すべく、新しい動きもでてきています。成年年齢が2022年4月から18歳に引き下げられることをふまえ、高校生の意思を尊重する必要性があると判断した政府が、規制改革推進会議で「一人一社制」の見直しに向けて検討を始めました。
最近では、高校生に会社をより深く知ってもらおうと、積極的にインターンシップや職場見学の受入れをする企業が増えています。また、多くの企業が集まる高校生向けの「合同企業説明会」の開催も活発になっています。
また、インターネットの普及で、高校生が自ら情報収集する場が昔に比べて格段に増えました。企業側も自社のWEBサイトに高校生専用の採用ページを設けたり、仕事内容をわかりやすく伝える動画を作ったりと、高校生に興味をもってもらうために、いろいろ工夫を凝らしています。
時代にあったルール作りが大前提
今後、人手不足はさらに深刻化していくことが予想されています。高卒新卒の需要はますます高まるでしょう。一人一社制や学校推薦をなくすことで、「企業と学校の信頼関係が失われ、生徒を採用してもらえないのではないか」という心配もなくなるのではないでしょうか。
学業最優先の高校生を守るために作られた就活ルール。学校の支援を受けながら就職活動を進められるなどメリットもあります。ルールの良いところを残しつつ、生徒が自ら調べ、探し、選べる環境を整えていくことも、これからの高卒就職活動には必要なのではないでしょうか。
生徒主体の就職活動が行われることで、納得感と責任感が生まれ、早期離職率に繋がるミスマッチも防げるはずです。