「働き方改革」の推進による働き方の多様化や、人手不足の影響で「AI導入」の動きが加速するなど、就職を考える高校生を取り巻く環境はめまぐるしく変化しています。
日々変化する社会の中で、高校生が希望をもって自分の未来を選択し、自立して生きていくには、変化に対応する力と心を育てていく必要があります。
その基盤を作るために、高校生活の中で、さまざまな学びや体験をする機会を作る「キャリア教育」が不可欠となります。
普段の授業を通して「キャリア教育」を実施する高校が増えてきていますが、「ノウハウが足りない」「1から作り上げる時間がない」など、日常的にキャリア教育を行う難しさを感じている先生達も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、高校を対象にキャリア教育支援を行っている「じぶん未来クラブ」の活動をご紹介したいと思います。
自分のキャリア像を明確にする「キャリア教育支援」
「じぶん未来クラブ」とは、以下の事業を中心に行っている、NPO法人です。
①学校でのキャリア教育の支援
②企業と連携して子供向けプログラムを開発・運営
③教育コーディネーターの養成
じぶん未来クラブの「キャリア教育支援」は、高校の総合学習の時間を使って学ぶキャリア教育プログラムの企画・運営を支援するものです。年に1回などの単発型ではなく、年間を通したプログラム作りを提案しています。
例えば、高校生が会ってみたい働く大人に話を聞く「職業人インタビュー」の実施や、大手企業にビジネスアイデアをプレゼンする高校生大会への参加、新入生にむけて高校生活を紹介する交流会の企画などを行っています。
「職業人インタビュー」では、「起業した人に会いたい!」「好きな商品を作った人の話を聞きたい!」など、強い思いを持ってインタビューに挑戦する生徒もいるそうです。一方で、身近な人に話を聞き、「知っている」と思っていた職業の意外な一面を発見する生徒もいます。
リーダー社員がおこなう高校生のキャリア教育「シゴトのチカラ」
「シゴトのチカラ」は、さまざまな企業の中堅・リーダークラスの社員が、高校生に向けてキャリア教育の授業をおこなうプロジェクト型の研修です。
社員3~4人が高校生1クラスを担当し、自社や業界の仕事、将来の可能性などを説明した後、1人の社員が「印象に深く残っている渾身の仕事」を発表します。高校生はその話を聞いて感じたことをグループで話し合い、まとめて、プレゼンテーションします。
5日間のプログラムを通して、高校生は業界や会社が大切にしている事や社会的な意義を知り、仕事の醍醐味を実感することができます。
高校生を惹きつける仕掛けとアウトプットの大切さ
じぶん未来クラブのキャリア教育支援は、情報を得るだけの授業ではなく、「好奇心を高める」「自分で考える」「チャレンジする」ための仕掛けがたくさん用意されています。
また、インプットした情報をアウトプットする場を設けているので、「自分の言葉で伝えたいことを表現する」練習にもなります。相手に自分の考えを正しく伝えるスキルは、就職を考える高校生だけでなく、すべての高校生に必要不可欠なものです。
進路やキャリアの選択にプラスの影響
<参加した高校生の声>
・言われたことをやるだけでなく、自分で探して発見したいと思うようになった
・自分には可能性があるのだと感じた
・自分には無理だと思っていたことが、実はすごく楽しいことだったと知った
・学生は勉強、大人は仕事という概念が壊れ、「どちらも本質は一緒だ」ときづいた
高校生の感想を見ると、大きな収穫があったことが分かります。
「シゴトのチカラ」で発表を担当したある社員は、「社会人は楽しいよ!」と「自分を信じること」を伝えたかったと言います。
就職したことがない高校生にとって「働くことは楽しいんだ」と感じられることは、とても大きな支えになるでしょう。生き生きと働く人から伝わる「自分を信じる」ことの大切さは、高校生が自分のキャリアを考えたり、進路を選択するうえで、大きな指針になっていきます。
様々な経験をすることで、困難や壁にぶつかっても自分で解決の道を探せるようになります。失敗や成功を繰返し体験することで「自分を信じる」ことができるようになるでしょう。
高校生が好奇心のアンテナを広げ、仲間と協力して学ぶことの楽しさを知り、「生きぬく力」を身につけるためには、バラエティー豊かなキャリア教育の授業をおこなうことが求められています。
「じぶん未来クラブ」などの団体の知恵をかり、地域と連携し協力体制を築きながらキャリア教育を進めていくのも、一案ではないでしょうか。