「仕事はあるけど人が足りない」が悩みの建設業界。建築・土木系学科をおいている工業高校に熱い視線を送っています。業界団体である「建設業振興基金」は、学校の声をくみとり、建設業界への就職と人材育成をうながす参考にするべく工業高校の取組みについてアンケート調査を行いました。
アンケート結果からわかる工業高校最新事情をみてみましょう。
建設業界への就職
平成26年の卒業生の進路ですが、66.4%が就職、30.6%が進学を選んでいます。就職先の内訳は建設業43.3%、建設業以外23.1%。全体の就職率は2年前64.6%とあまり差がありませんが、建設業への就職率は36.4%から約7ポイント上昇、求人数が増えたのにしたがって増加しました。
建設企業からの求人数は、1学科あたり平均156.9社です。建築科・土木科ともに平均的な定員は40名ですので、求人倍率は4倍近くになっています。これは一般高校の求人倍率に比べ格段に高い数値。専門課程を学ぶ高校生への高い期待がうかがわれますね。
進路希望調査の実施状況
就職指導に向けた進路希望調査(1回目)については、1年次4~6月の入学後まもない時期から行うという回答が33%と高い割合でした。入学直後から進路についての働きかけが行われる傾向があります。
インターンシップ・企業見学
1年次に企業見学を行う学校が全体の75%。インターンシップは2年次に実施する学校が77%となっています。
建設業でのインターンシップについて、学校側からは「生徒の就職に対する意識が確実に変わる。できるだけ現場経験をさせてあげたい。」「現場見学や意見交換会など、働く方々と会話することで大きな変化があった。」などのコメントがあり、高く評価されていることが感じられました。
一方、生徒受入れ方法への意見や要望もよせられており、今後の改善が期待されます。
就職後の状況
建設業に就職した生徒の定着率については「高い」「比較的高い」を合わせると75%を超えています。厚生労働省発表の高卒新卒者3年内離職率が約40%であることと比べると生徒の定着率は非常に高いことがうかがえました。
高校時代の人材育成や資格取得に向けた指導が実を結び、良い作用を及ぼしていると考えられます。
改善のための提案の声
進路指導の現場からは、生徒・卒業生のナマの声を知る先生方のさまざまな意見、要望があげられていました。求人に関すること、働き方に関すること、業界のイメージ作りなど建設業界が直面する多岐にわたる課題がピックアップされています。
建設業は2020年の東京オリンピック特需や震災の復興事業継続で好調な経営環境にあります。しかし業界共通の悩みは人手・人材不足。
総務省の労働力調査から、働く人全体の数が横ばいであるのに対して年々建設業の就労者数が減少していることがわかります。しかも50代以降の数はあまり変わらない反面、若年層が半減している状態なのです。
アンケートの目的には、高校で建築や土木の専門課程を学んだ若い働き手に「将来的に建設業界に就職し、学校で学んだことを実社会で活かすことを通じ、『仕事のやりがい』と『ものづくりの幸せ』を感じてもらうことが非常に意義深いと考える」とあります。
普通科の生徒よりひとあし早く社会との接触を始めることのできる工業高校に通う皆さん。チャンスをいかして、自分に合った職場をみつけてくださいね。