「働く人を守る」労働法についてわかりやすく解説するこのシリーズ。前回は「働く前のチェックポイント」をご紹介しました。今回は働き始めた後あれ?と思ったとき役立つ「働くときのルール」についてみてみましょう。
「最初は時給500円ね」
賃金には最低額が定められています。それより低い額はみとめられません。都道府県ごとに決められており平成28年度現在、一番低い額でも714円となっています。万が一時給500円で働くことに同意しても法律によって無効となり、最低賃金との差額を請求できるのです。
「経営くるしいから給料減らすけど我慢してね」
会社は約束した賃金をきちんと支払わなければなりません。同意がないのに労働者に不利益な変更をすることは許されないのです。
ただ、下げられたお給料を黙って受け取っていると同意があったとみなされてしまうことがあるので注意してください。気になることがあったら、会社に問い合わせましょう。
「遅くまで残業させられるのに残業代が全然出ない!」
1日に8時間、1週間に40時間を超えて時間外労働(残業や休日出勤)をさせた場合、会社はパートやアルバイトを含め働く人に相応の割増賃金を支払わなければなりません。割増の割合も法律で決まっています。
「サービス残業」という言葉を耳にしたことがあるでしょうか。支払われるべき時間外手当なしに労働者を働かせている状態です。ルール違反ですので、労働基準監督署に相談しましょう。
「みなし残業ってなに?」
実際に働く時間にかかわらず、あらかじめ取り決めた時間分の残業代を払う仕組みです。注意しないと働く人が損をしやすい制度。雇用契約書に必ず書いてありますから、内容をよく確認してくださいね。
みなし残業制のひとつは、対象になる業務が限定されている「裁量労働制」。実労働時間の把握が難しかったり、時間で賃金を決めることがなじまない人に対し、労使協定を結び合意した時間を1日の労働時間とみなすやり方です。
注意が必要なのは「定額残業制」。すべての労働者が対象になる可能性があります。「基本給23万円(20時間分の残業代を含む)」。こんな求人募集、見たことありますよね。もちろん「うちはみなし残業制だから」といって、いくら残業をさせてもお給料は一定ということではありません。
基本給にいくら、あるいは何時間分の「みなし残業代」が含まれているのかを確認しておきましょう。実残業時間のほうが多ければ不足する残業代を請求できます。
他にも「フレックス」「変形労働時間制」などさまざまな働き方があります。労働時間を柔軟に効率よく使えることにはメリットがありますが、全く自由に取り決めをできるわけではありません。企業は、労働者を保護するための法令で定められた規定を守らなければならないのです。
「遊びに行くために有給休暇ってダメなの?」
有給休暇は利用目的を問われることなく取得できます。有給休暇の付与は法律で基準が決まっており、アルバイトやパート勤務であっても条件にあえばあたえられるものです。しっかり働いたらその分休むことも大切ですよね。
「仕事中にケガしちゃった」
仕事が原因のケガは労災保険が適用され、自分で治療費を負担する必要はありません。労災保険は通勤中を含めた仕事中のケガ、病気、障害、死亡に対し国が給付を行う制度です。保険料は全額会社負担。パートやアルバイトを含め、すべての労働者が対象となります。