キャリア教育の重要性が叫ばれています。背景には社会環境の変化、若者の資質をめぐる課題、子どもたちの発達のアンバランス、将来に関する決定の先送り傾向などさまざまな問題が。そこで、このシリーズでは効果的なキャリア教育を創る実践のベースとなる情報をご紹介していきます。
1回目はキャリア教育にまつわるさまざまなデータから見えてくる「今」について解説します。キャリア教育の重要性はわかっていても、具体的な課題についてピンとこないという先生がいらっしゃるかもしれません。現状をつかむことで、指導のヒントが見えてくるのではないでしょうか。
まあまあできるけど、興味も自信もない?
「OECD生徒の学習到達度調査(PISA)」の結果を見ると日本の高校生の成績はおおむね平均以上です。ところが教科学習への自信や興味が他の参加国・地域に比べて極端に低いことがわかりました。
日々の学習が将来の仕事の可能性を広げる、といった肯定的な見方もうすいようです。自分の将来との関係に気づかせ、学習意欲の向上を促す必要があるといえるでしょう。
「自分がどうなってしまうのか不安」
高校2年生に「進路を考えるとときの気持ち」をたずねた調査データがあります。半数近くが「自分がどうなってしまうのか不安になる」と回答。さらには「考えること自体が面倒臭い」「今が楽しければいいので考えない」が合計で1割を超えています。将来に希望よりも不安を感じていることがうかがえます。
就職したはいいけれど・・
高校新卒で就職しても、3年以内に辞めてしまう人の割合は全体のおよそ5割。その約半数は1年以内に離職しています。理由をみると「仕事が向いていない」が71.4%にのぼりました。2位の「職場の人間関係」21.4%を大きく上回る結果です。
キャリア教育の中で仕事への興味・意欲や適性を考えるチャンスを多くできれば、仕事が合わないというミスマッチを減らすことができるのではないでしょうか。
進学した生徒にも課題が
4年生大学へ進学した生徒のうち4年間で卒業できるのは約8割、全体の1割は退学してしまいます。退学・休学の最大の要因は「経済的理由」で2012年には20.4%(5年前は14.0%)。奨学金を借りるなどして無理に進学しても、必ずしも良い結果にならないことがわかります。
また「学業不振」は同14.5%(5年前は12.7%)も主な要因のひとつであり、高校と大学における教育のギャップに学生が適応できていない可能性があるとされています。
データは大きな傾向を明らかにしてくれます。しかし教育の現場では、キャリア教育を推進することでデータに反映するよりも早く、手応えを感じることができるのではないでしょうか。生徒たちが柔軟かつたくましく、社会人として自立していくことができるよう促す教育が強く求められています。