キャリア教育をすすめるなかで重要性が強調されているのは、「地域や学校の実態に応じて」「学校の特色をいかして」「生徒にあわせて」実施するということです。
そこで、さまざまな高校でのインターンシップ取組み事例をご紹介したいと思います。状況が異なれば、生徒への働きかけ方やめざすゴールも変わってきます。効果的な取り組みのヒントになさってください。
「どうせ自分なんて」
兵庫県立東灘高校は一時期3年間で1クラス分以上の生徒が退学、卒業をむかえても約2割が進路未定という状況でした。当時の生徒たちに象徴的な言葉は「どうせ自分なんて」。家庭環境や学習意欲などに問題を抱え、成功体験が少なく自信の持てない生徒が多くいたそうです。
現在、東灘高校では「自己肯定感」「充実感」「将来志向」をキーワードに、生徒たちが自分を好きだと感じ、今の学校生活に意義を見いだし、未来に向かって前向きに取組めるようサポートしています。
「体験」がテーマの2年生は希望進路にあわせてコース選択をし、インターンシップや大学の模擬講義などの体験学習を3~5日行います。マッチングの難しい就職コースの希望者には全員の面接を行い、こまめに声をかけたり体験先での頑張りを共有して多面的なフォローをしているとのことです。
いつもだるそうでやる気を出せなかった生徒。メーカーで事業所体験をした後、生活態度が一変したそうです。「仕事は忙しくてしんどいだけでなく、楽しい事や勉強になることも多いとわかった」と就職に向け意欲を見せるようになりました。
「進学指導重点校」
千葉県立東葛飾高校は県内トップクラスの進学実績と自由な校風で知られています。2004年、県から指定を受けインターンシップを導入しました。指定期間を終えた現在も活動を継続、拡大しています。
東葛飾高校のインターンシップは2年生の約25%が参加、夏休みの2日間で実施されています。体験先は医師や法曹など大学への進学段階で職業選択をする専門職を中心に依頼しているそうです。生徒が自分の希望を確かめ、勉強するモチベーションを高める効果があるとのこと。参加しなかった生徒や後輩、関係先とも体験を共有し、インターンシップがあるからと同校を志望する中学生も増えているといいます。
進路指導をする立場からすると「労力はかかるし、大学進学実績に直結するわけではない。しかし働く大人の生き方に触れることは生徒のプラスになっていると実感でき、実施する価値がある。」とのことです。
「島じゅうキャンパス」
山口県立周防大島高校は瀬戸内海に浮かぶ周防大島にある学校です。少子高齢化や人口減少の課題を抱えるエリアで学校を存続させ、地域にも貢献していくにはどうしたらよいのか。これから日本の各地で起こる問題かもしれません。
周防大島高校では生徒たちが主体的、かつ誇りと自信を持って地域で活動できるよう、島の資源を生徒の学びに生かす取組みをすすめています。
具体的な仕事体験の場として、月1回開催される地元の特産品などの屋台が出店する「安下庄海の市」を活用しています。お店を手伝うほか、地元の水産物から新たな価値を創造する商品開発コンテストに2年生全員が企画書を作成。選ばれた商品を地元の人と共同で試作、海の市で披露しました。
いかがでしょうか。高校生のインターンシップ、とひとくちに言ってもいろいろな取り組みがあることがわかります。しかし、共通するのは生徒たちに前向きな変化をもたらすこと。今後さらに各校の状況に合わせたインターンシップの広がりが期待されます。