日々高校生のキャリア教育に取組む先生方は、カリキュラムの手応えをどのように感じていらっしゃるでのしょうか?プログラムによっては、実施のタイミングの違いで「効果が大きい」「あまり影響がない」などと思われることがあるかもしれません。
高校生に響くタイミングは?
そこで、高校に入学したての1年生前半から3年生の後半の間に「キャリアプランニング能力がどのように変化したか」を分析した国立教育政策研究所の調査をご紹介します。
キャリアプランニング能力を測る調査の質問項目に対し「あてはまる」「ややあてはまる」と答える生徒の割合は、時間を追うごとに高くなっていきます。
①勉強をすることの意味について自分なりの考えを持っている
② 仕事をすることの意味について自分なりの考えを持っている
③ 世の中には,様々な働き方や生き方があることを理解している
④ 職業や働き方を選ぶ際に,どのように情報を調べればよいかわかっている
⑤ 将来の夢や目標が具体的になっている
⑥ 将来の夢や目標に向かって努力している
特に①④⑤⑥は、1年生前半では5~6割だったものが、3年生後半では7~8割と大きく上昇しています。特に2年生後半から3年生にかけての伸び率が大きいのは、進路の方針をある程度明確にするからかもしれません。
学校生活に関する意識・態度ともリンク!
たとえば「学校生活は充実している」「自分の能力をいかせる仕事がしたい」というような質問に「あてはまる」を選ぶ肯定的な傾向は、キャリアプランニング能力の構成要素と関わっているとのことです。
とりわけ⑥の「将来の夢や目標に向かって努力している」は「自分の将来が楽しみだ」と強い関りがあり、キャリアプランニング能力の高まりは学校生活や将来のイメージに対しポジティブな作用をすると見られます。
ずっとポジティブではいられない?
全体としては上昇していくキャリアプランニング能力ですが、回答者一人一人に注目してみると、必ずしも累積的に高まり「一度良い状態になればそれ以降も持続する」というものではないようです。
④の「職業や働き方を選ぶ際に,どのように情報を調べればよいかわかっている」に着目し、「あてはまる」傾向を〇、「あてはまらない」傾向を×とすると、6回の調査を通じ×と〇が交互に現れるケースもあり、一度〇になればその後持続していたのは半数以下の44.5%でした。
キャリア教育の中でも「卒業生による講演・体験発表会・懇談会」は1年次には④の維持や改善につながりますが、3年生でこれを実施するとマイナス効果を生むことがあるそうです。現実的な話しに、迷いやとまどいが生じるのかもしれません。
生涯必要なキャリアプランニング能力
キャリア教育で育てることを目指す基礎的・汎用的能力。「キャリアプランニング能力」は「人間関係形成・社会形成能力」「自己理解・自己管理能力」「課題対応能力」のとあわせて、「仕事に就くこと」にフォーカスし、整理された具体的な能力のひとつです。
「自分なりの」考え
キャリアプランニング能力の構成要素を眺めると「自分なりの」ということが重要だといえそうです。学校には、高校生それぞれがキャリアイメージを持ち、「自分らしい未来を作り出す力」を育てるサポートが期待されていると言えます。