高卒で就職した若者の4割が3年以内に退職しています。1年以内の退職者は平成28年3月のデータで17.2%。低下傾向にあるものの、短期間で離職してしまうケースは少なくありません。「仕事をやめるときの状況」は、その後のキャリアに影響があるとみられます。
離職の理由は「長い労働時間」
東京都の25~34歳の若者を対象に行われた「ワークスタイル調査」には若者の離職行動についてのリサーチがあります。離職の理由ですが、2001年調査では「仕事が合わない、つまらない」など仕事の内容に関わる理由が多かったものが、2016年調査では男女ともに「長時間労働」がトップになりました。若者の勤労意欲不足、などと言われることもありますが職場の雇用管理にも問題があるといえそうです。
「計画的かどうか」がポイント
切実な理由で退職を決めることはやむを得ないかもしれません。注意すべきは、仕事をやめる時点でどのような予定を立てているか、次の方向性を決めての退職かどうかということです。どのような状態で離職するかは仕事をやめることの意味を分けます。「計画的であったかどうか」が再就職先への希望の実現度や満足度を左右することがわかっているのです。
高卒者に多い「何の見通しもなかった」
学校卒業後、初めて就いた仕事をやめる際の準備状況の2016年調査結果を見てみましょう。
高卒 | 専門・短大・ 高専卒 |
大学・ 大学院卒 |
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次の仕事をみつけていた | 28.3% | 27.9% | 44.1% |
次の仕事の見込みがあった | 15.1% | 17.2% | 13.1% |
学校へ行く予定だった | 5.7% | 7.4% | 5.9% |
結婚・出産等で仕事につかないつもりだった | 5.7% | 13.9% | 10.2% |
何の見通しもなかった | 43.4% | 26.2% | 22.9% |
高卒就職者に「何の見通しもなく」仕事をやめる人が多くなっています。どのような準備状況で仕事をやめたかはその後の就業に影響し、調査時点で正社員として勤務していた割合は「次の仕事をみつけていた」80.6%、「見込みがあった」55.0%。「見通しなし」のグループでは39.6%という結果でした。
転職者の現職への「気持ち」
転職後の仕事への満足度がうかがえる「3年後も今の勤務先にいたい」と答えた割合は、正社員として働いている人で55.5%、非正規雇用の人では38.8%です。このことから、退職の時点で見通しを持つことで正社員として転職しやすく、後の仕事にも満足できる可能性が高いといえます。
非正規になりやすい高卒早期離職者
高卒の早期離職者の場合、その後の就業が正社員である割合は30%。大学卒の65%に比べ非正規となるケースがかなり多く、大卒者と高卒者の差は、2001年の調査と比較しても拡大しています。かつては大卒にも多かった「見通しなし」群は2016年調査では大幅に減っており、大学で広くキャリア教育が行われるようになった影響と考えらえるとのことです。
高校生全員に知識と情報を
このことからもキャリア教育の重要性がうかがえます。高卒で就職する生徒だけでなく、高校在学中に全ての高校生がワークルールを理解し、ハローワークなどの支援を活用できるようにしていく必要があるのではないでしょうか。
働くことに関する知識と情報収集能力を持つことで、単なる退職ではなく積極的な転職をすることも可能になります。高校でのキャリア教育の充実に、働くことの現実を伝える情報提供は欠かせません。ハローワークなどの側面支援も含め、高校生への教育の充実が期待されます。