最終更新日:2020.5.19
高卒で就職する高校生の採用にはさまざまなルールがあります。求人の出し方もそのひとつ。高校生新卒採用の際にどちらかを選ばなければならない「指定校求人」と「公開求人」の違い、それぞれのメリット・デメリットをチェックしておきましょう。
指定校求人とは?
企業が新卒の高校生を募集する際に、学校を指定して求人を出す方法です。生徒を採用したい学校を絞り込み、推薦依頼校として指定することができます。また、指定校求人の中には「科指定」というものもあります。どの科でも応募できる「全科指定」がほとんどですが、職種によっては、科を選択して求人票を送ることもできます。
<メリット>
企業側→求める人材像や社風を理解したうえで、適した生徒を推薦してもらえる。
学校側→継続的に安定して生徒を採用してもらえる。
生徒側→高校の先輩が多数勤務しているので心強い。
最大のメリットは、学校と企業が信頼関係を築きやすいことでしょう。企業は学校訪問を通して、コミュニケーションを図りながら、採用したい人物像などを進路担当の先生に直接伝えることができます。
学校側としても、その企業に就職した卒業生の話や、今後の採用動向の情報を聞くことができるので、進路指導に反映できます。
高校生にとっても、公開求人より競争率が低くなるので、内定が取りやすいでしょう。また、就職先の企業に高校の先輩が多数勤務しているのは、安心できる要素です。
<デメリット>
企業側→募集人数の3倍までの学校にしか募集が出せない。
学校側→募集人数に合わせて推薦することを優先するあまり、就職後のミスマッチに繋がりやすい。
企業にとって大きなデメリットは、募集人数の3倍までの学校にしか募集を出せないという慣習(以前にはルールでした)でしょう。2名の採用枠であれば最大6校までしか募集がだせません。
必ずしも応募があるとは限らないので、人材を集めるチャンスが限られるということになります。地元の高校を中心に採用したい場合などには、指定校を定めたうえで、学校訪問や職場見学会の開催など、一校一校との関係を深める努力が必要になります。
また、学校が推薦してきた生徒を受け入れるだけなので、多くの人材の中から、自分の会社にあった高校生を直接選べないというデメリットもあります。企業と学校、お互いの信頼関係でなりたっているといっても過言ではない求人方法なので、しっかりとした情報共有が重要になってくるでしょう。
公開求人とは?
ハローワークが管理する「高卒就職情報WEB提供サービス」で求人票を全国に公開でき、広い対象への募集が可能です。毎年6月1日以降ハローワークで求人申込書の受付けが始まりますが、その際に「公開希望」を選択することで、翌年6月までサイト上で求人票が公開されます。
閲覧するには各高校に割り当てられるIDとパスワードが必要で、高校生は学校の先生に相談しながらさまざまな条件での検索をすることができます。求人情報だけではなく、企業のイベントや職場見学会などの情報も閲覧できます。
<メリット>
・1年間、サイト上で求人票を公開できるので、求人票を持参できない遠方の高校の生徒にも見てもらえる。
・条件を指定して検索できるので、生徒が希望の企業を見つけやすい。
<デメリット>
・WEBに求人票を掲載しているだけでは、自然に高校生を採用するのは難しい。
・高校生や先生、保護者への働きかけが必要になる。
現状では、進路指導担当の先生は、①指定校求人②公開求人(持参・郵送)③公開求人(WEB)の順で、生徒に勧めていきます。学校にはたくさんの求人票が届いているので、WEBでの求人票は後回しにされがちです。
最近では、自社のホームページで「積極的に高校生を採用」していることが分かる採用サイトを公開している企業も増えてきました。
会社の雰囲気や高卒社員の働き方、キャリアモデルなどを高校生が分かりやすいように図や写真、動画などで紹介し、情報発信をすることで会社への興味を持ってもらうことができれば、遠方の高校生を採用するチャンスも大きくなるのではないでしょうか。
高校生の選択肢を広げ、採用のチャンスを増やす
どちらの求人方法を選択するにしても、高卒新卒の採用は全ての手続きを学校経由で行うことになります。生徒の決断に影響力のある学校や先生との信頼関係が、重要なことには変わりはありません。
近年では指定校求人について「均等な就職機会の確保の観点から必ずしも望ましくない」とする意見もありますが、「優秀な高校生を確実に採用したい」企業と「自分の学校の生徒を継続的に就職させたい」学校にとっては、メリットのある方法と言えるかもしれません。
毎年、学校には膨大な数の求人票が届きます。それぞれの特徴を把握したうえで、自社の採用計画にはどちらが有効なのかを見極める必要があります。また、求人票だけでは伝わらない会社の魅力を、自社のHPなどで積極的に発信することで、採用のチャンスを増やしていきましょう。