効果的なキャリア教育を創る実践のベースとなる情報をご紹介するシリーズ。「生徒たちの今を語るデータ」「キャリア教育をめぐる動向」「成功するインターンシップ」についてとりあげてきました。今回はキャリア教育をめぐる疑問にお答えし、指導計画づくりの手がかりをご紹介します。
無理かも…やることが多すぎて
教育現場には今、社会からの多くのニーズと期待が委ねられています。学校が担う教育活動は増加し、〇〇教育が山積。そんななか、キャリア教育を体系的に推進していくための指導計画づくりが期待されています。キャリア教育は単に特定の活動を実施したり、追加したりすればよいというものではありません。日常の教育活動全体を通じてなされるべき取組みであると言えます。
さて、そう言われても…とお感じになった先生方!キャリア教育の推進と年間指導計画づくりに役立つヒントをご紹介します。ぜひご参考になさってください。
Q1 キャリア教育より学力向上の方が大事なんじゃ?
なぜ勉強するのか、今の学習が将来どのように役立つのか…これらについての発見や自覚は学習に対する姿勢を変えます。キャリア教育を通して学ぶ意義を認識することは、結局は学力向上への早道です。
Q2 キャリア教育ってどんな効果があるの?
子どもたち本人だけではなく、周囲の大人にも影響がおよびます。それぞれにどんな効果があるのかみてみましょう。
「子どもたち」
学びと働くことの関連に気づき学習意欲が向上。職場体験など異世代との交流や、社会でのルールやマナーを体得する経験を通し、自己肯定感が高まり、しごと観が形成される。
「学校」
学校教育が目指す理念や、進むべき方向が教職員に共有される。実践を通じて学校内外との連携・協力の機会が増え、地域社会に開かれた学校作りに役立つ。
「家庭」
家族それぞれの役割に生徒の認識が高まり、共通の話題が増え、相互理解が深まる。
「地域」
学校と一体になり、子どもたちを育てる気運が高まる。地域住民同士や事業所相互の交流などが活発になり、地域が活性化する。
Q3 生徒指導で忙しい…余裕がないんですけど
日常の活動をぜひキャリア教育の視点で見直してみてください。教育の現場では、常に生徒が将来生きていくために必要な能力や態度を育てようとしていらっしゃることと思います。日頃の指導を基礎的・汎用的能力の育成の視点で整理することで、キャリア教育の推進とより効果的な生徒指導に結びついていきます。
Q4 「キャリア教育の視点」って何?
具体的には社会的・職業的自立のために必要な、以下の4つからなる「基礎的・汎用的能力」を育てることです。
・人間関係形成・社会形成能力
・自己理解・自己管理能力
・課題対応能力
・キャリアプランニング能力
Q5 〇〇教育はやらなくてもいい?
キャリア教育との二者択一ではありません。キャリア教育で育む力は〇〇教育で育成される能力の「土台」ともなり、両者は同時に充実していくことになります。
Q6 教科学習を通じてキャリア教育をするには?
各教科や道徳、総合的な学習などには子どもたちのキャリア発達を促すものが数多くあります。すでに実施している活動をキャリア教育の視点から見直し、すでにあるキャリア教育の「断片」をつなげ、補完していくことが大切であるといえます。
Q7 年間指導計画を作る具体的なポイントは?
まず、今行っている教育活動の中にたくさんある「宝(=キャリア教育の断片)」を洗い出しましょう。既にあるものを活用してつなぎ、「我が校で」「今年度」「この学年の」生徒に身につけさせたい力に焦点をあて検討することがポイントです。
Q8 学校の効果的な体制づくりのポイントは?
まず、学校全体でキャリア教育推進の意思を共有することが重要です。そのうえで校長のリーダーシップのもと中核となる構内組織を設置するとよいでしょう。この組織を中心として学校の全体計画、学年ごとの年間指導計画を策定しPDCAサイクルを基盤とした取組みをすすめることが大切です。