高校生の就職活動は、大学生の就活とは違い、独特なルールが存在します。そのひとつが、就職を考える高校生1人につき、一社しか応募できない「一人一社制」。約80年前から続いているルールですが、今、「一人一社制」の見直しが始まっています。
大阪府では、2022年度に卒業予定の高校生から、複数の企業に応募できるようにする方向で検討を始めました。厚生労働省と文部科学省が「高卒就活における慣行の見直しが必要」とする報告書を都道府県に送る準備を始めたこともあり、今後、ルールを見直す自治体が増えていくでしょう。
「一人一社制」はなぜあるの?
「一人一社制」は「高校生の学校生活を守る」ことを大前提に作られたルールです。応募できる企業をひとつにすることで、高校生が就職活動に追われることなく、健全な学校生活が送れるように配慮されているのです。
「一人一社制」がなくなるとどうなる?
高校生の就職活動は、高校生の学校生活を守るためにスケジュールが厳密に決まっています。一人一社制がなくなった場合、限られた日程で複数の企業と面接することになります。選択肢が増えるメリットがありますが、学業との両立が可能なのか不安もでてくるでしょう。選考期間を夏休みに前倒しするなど、柔軟な対応が求められます。
企業にとっては、深刻な問題となります。基本的に内定辞退がなく、応募してきた高校生を確実に採用できる「一人一社制」の仕組みは、企業側にはメリットが大きいからです。しかし、入社後のミスマッチによる早期離職に頭を悩ませているのも事実。複数の企業を見比べて、自社に魅力を感じてくれた高校生を採用する方が、長期的な視点で見ても効率的なのは明白です。
チャンスを掴むために必要な2つのカギは「情報収集力」と「キャリア教育」
メリット・デメリット共にある「一人一社制」の見直しですが、高校生にとっては選択肢が広がる大きなチャンスです。このチャンスを掴むために必要なカギは2つ!
① 自ら情報を収集する力
複数の企業に応募できるようになれば、選択肢は格段に増えます。いろいろ見比べた上で、行きたい会社を選べるので、より納得できる就職活動ができるでしょう。
しかし、選択肢が増えても、最後にひとつ選ぶことに変わりはありません。多くの情報を収集し、必要な情報を整理し、選び取る力が必要になります。まずは、ネットや会社のHP・パンフレットなどを利用して、積極的に情報を収集しましょう。
② 職業観を養うキャリア教育
高校1~2年生のうちに、職業観を養うキャリア教育を受けられるかがカギになります。「どんな職種があるのか」「自分の適職は何か」「将来のキャリアプラン」をしっかり考えることは、集めた情報を選ぶ時の判断基準になります。
自治体や企業が実施しているインターンシップなどに積極的に参加するのもおすすめです。違う高校の人や年齢の違う人達と行動を共にし、意見交換をすることは、新しい発見も多く、かけがえのない経験となるでしょう。
変化に柔軟に対応してチャンスを掴もう!
高校にとっては「高校生の就活の負担が軽減する・企業との信頼関係が保てる」、企業にとっては「内定辞退のリスクが少ない・確実に採用人数を確保できる」など、一定のメリットがあるため続けられてきた「一人一社制」のルール。
撤廃することで、大企業への応募が集中し、中小企業への応募が減るのではないかという企業の心配や、競争率があがって採用がもらいにくくなるのではという高校生の不安もあるでしょう。
内閣府では、懸念事項を払拭するために、学校側に「キャリア教育の充実を目的とした先生の研修機会を確保すること」を、企業側には「高校生への情報提供の充実」を促すなど対策を促す方針です。
「高校生の選択肢が増えるように」「高校生が主体性をもって職業を選べるように」と、見直しが進む「一人一社制」。この変化をチャンスと捉え、柔軟に対応できれば、納得のいく就職活動が実現するのではないでしょうか。