期離職率の高さが社会問題になっています。毎年、厚生労働省が発表している「3年以内の離職率の推移」によると、大卒新卒者の3年以内の早期離職率は約3割。高卒新卒者の早期離職率は約4割にものぼります。
「働き続ける人」と「離職する人」では、何が違うのでしょうか。
「最初に正社員として就職した会社」に入社する前におこなった就職活動や学校生活での経験が、その後の離職傾向とどう関係するのかを調べた労働政策研究・研修機構(JIPT)の調査結果より、その違いを考察してみたいと思います。
働くためのルールを知るのがカギ?!
労働政策研究・研修機構の調査の中で、「在学中にキャリア教育や就職支援を経験したことがある」と答えた人について、離職者と勤続者にどのような違いがうまれるのか注目してみました。
大卒就職者はキャリア教育の有無による離職者と勤続者の割合の差は2ポイントほどしかなく、短大・専修学校・高専卒においては、ほとんど差はありませんでした。
一方で、高卒就職者は、キャリア教育を経験した若者は離職者より勤続者の割合の方が多いことが分かりました。その中でも、「労働法などの働くためのルールを学んだことがある」と答えた人の割合は、働き続けている人の方が8ポイントも多いという結果になりました。
キャリア教育の中でも、特に労働法などのルールを学ぶことが、安易な離職を防ぐのに有効な方法であることが分かります。
学校主導ですすめられる今がベストタイミング!
この調査では、大卒者で「就職支援をうけた」「就職説明会に参加した」など、就職活動を積極的に熱心におこなった人ほど、離職者が多いという結果も出ています。
これは、大学生の就職活動が学生主導の自由市場であることが要因のひとつだと考えられます。支援を受けたということは、就職活動が難航していたことを意味し、結果、第一希望の会社に入社できず、早期離職に繋がった可能性もあります。
一方で、高校生は学校主導で就職活動が行われます。就職支援やキャリア教育も、学生が自ら動いて体験したというよりは、学校がそういう場を用意し、経験させたと考えるべきでしょう。裏をかえせば、高校の時期に、学校が積極的に労働法について学ぶ場を与えることが必要不可欠だということです。
「はたらく」へのトビラ
就職する前に、労働法などを学ぶ教育の重要性については、国も認識しています。厚生労働省では2017年に高校等を対象に、労働法を学ぶプログラム『「はたらく」へのトビラ』を作成し、配布しました。
この冊子には、労働法などの働くためのルールについて学ぶために、学校でどのような授業をすればよいかのモデルプランが高校教員向けに書かれています。
就職後のミスマッチを防ぎ、早期離職を回避するためにも、授業の中で労働法を生徒にきちんと教えることが、いまの学校教育に求められていることではないでしょうか。