求人市場において、高校生を取り巻く環境はどうなっているのでしょうか。また、就職を考えている高校生と、先生方やご父兄の皆様は、どんなことに留意して今後のアクションプランを立てればいいのでしょうか。
本記事では、「高卒就職四季報・2016夏」と題して、昨年の高卒の就職状況や、今後の就職活動の流れとポイントを紹介。第1回は、文部科学省の調査資料より、学校別や業種別の就職状況についてまとめてみました。
就職率の概要について
高卒就職と大学を卒業してからの就職では、就職率にどのような違いがあるのでしょうか。文部科学省が27年3月に発表した「大学等卒業者及び高等学校卒業者の就職状況」によれば、高校卒業者約107万人のうち、就職希望者は約19万2000人。そのうち約18万8000人が内定を得ており、高卒の就職率は97.5%となっています。
一方、大卒の就職率は96.7%、短期大学は95.6%、高等専門学校は100%。全体は96.7%で、出身の学校による差はさほどありません。平成21年には91.6%だった高卒者の内定率は年々上昇しており、就職に対する心構えと、やりたい仕事や行きたい会社のイメージが明確であれば、焦って動かなくても決められる「売り手市場」にあるといえます。
普通科より工業、福祉、看護学科が高い就職率
専門学科別にみると、普通科の95.5%に対して工業99.3%、福祉が99.2%、介護99.0%。仕事内容、条件などを明確にしやすい学科が、就職率が高い傾向にあります。就職率が高い県は、99.9%の富山と、99.8%の石川と福井、99.6%の新潟。これらの県は、公立高校のインターンシップ実施校比率でも90%以上と高い数字を出しており、高校生の就職についてのガイドがしっかり推進されているのが見て取れます。
就職率が低いのは、唯一80%台の沖縄と、95%前後の大阪、千葉、兵庫、福岡。地域の産業状況と、インターンシップや進路指導に対する全県的な改善の有無が、数字に反映しているといえるのではないでしょうか。
大事なのは、「早く」より「ちゃんと」。
就職率が高いこと自体はいいのですが、卒業後3年以内で離職してしまう高卒就職者が40%もおり、これは一概に本人の問題とばかりはいえないでしょう。早期に決めることよりも、早いうちから社会や仕事についての理解を促進し、卒業後の自分自身の姿をイメージできるようにしたうえで、就職活動を行うことが重要です。数年前より決まりやすくなっているからこそ、学校、ご家庭におけるキャリア教育の重要性がより問われてきています。