進路指導にはさまざまな難しさがあります。リクルートの「高校の進路指導に関する調査」によれば、難しさを感じる要因トップ3は「進路選択・決定能力の不足」「教員が進路指導を行うための時間の不足」「学習意欲の低下」とのこと。
うんうん、と頷いていらっしゃる先生も多いのではないでしょうか。この記事では、先生方のお悩み解決のヒントになるアイデアをQ&Aスタイルでご紹介したいと思います。
Q 生徒と保護者の進路希望にギャップがあります。
A 一番気をつけたいのは教師が保護者の味方になってしまうこと。保護者の意向だけを汲んで一方的に説得し始めると、生徒は行き場がなくなります。かといって「子ども自身の人生だから」と、保護者を無視して生徒の言い分ばかりに耳を傾けていると保護者の信頼を失います。
大切なことは保護者と生徒の意向をそれぞれ十分に聞き、わかりやすく、受け入れやすく双方に伝えることです。
第三者であり、高校生の進路に関するプロである教師が通訳になることで保護者と生徒の希望をすり合わせることができ、双方にとって納得のいく選択が可能になるでしょう。
Q 「やりたいことがわからない」という生徒に困っています。
A すべてにおいて主体性に欠け、受け身な姿勢の生徒が多くなってきたと感じている先生が多いようです。確たる目的意識もなく、決断を先送りするために安易に進学を選ぶ生徒もいます。
こうなると「やりたいことがわからないのが普通である」ということを前提にした指導が必要であると思われます。未来を想像させるばかりでなく、「今の自分に何ができるか」「やりたくないこと」など、現状の自分から考えられることを問うてみましょう。
生徒が明確にイエスといえることが増えれば、それを糸口に「やりたいこと」へ導きやすくなります。わからない、と逃げていても、いつか選ばなければなりません。生徒たちが「あの時先生に言ってもらってよかった」と感じてくれるような声かけがしたいですね。
Q 3年生の夏休みを前にまだ進路が曖昧な生徒がいます。
A 生徒同士の会話から「やばい!」と気づかせるというのはいかがでしょうか。たとえば、進路について考えが進んでいる子、普通の子、遅れている子をとりまぜたグループで「夢の実現のために夏休みにすること」をテーマにディスカッションさせせるのです。
すると、他の生徒が自分より真剣に考えていることに気づいたりすることがあります。ポイントはグループ分け。仲間同士だと「まだ大丈夫」と逆効果になることもあります。
あるいは、卒業生との交流も刺激になるかもしれません。1年後の自分の姿をイメージするチャンスになるでしょう。大切な高校最後の夏休み、無駄に過ごさないよう働きかけたいものです。
Q 進路が決まらないまま卒業を迎えてしまうケースがあります。
A まず、ギリギリまであきらめずに働きかけることが最も重要です。受け入れてくれそうな事業所探しや、生徒への励ましを続けてください。子どもたちはあきらめやすい生き物です。教師や大人は「簡単にあきらめたり見放したりしない」「見守り、助けになる」と明確に示したいものです。
そのうえで、やむなく進路未定のまま高校から送り出すことになったときは「いつでも相談に来なさい」と声をかけましょう。母校に相談に乗ってくれる人がいるというのは、生徒にとって大きな支えになるはずです。