少子高齢化や雇用の多様化など、子供達を取り巻く社会環境が大きく変化するなか、高校においてもキャリア教育の大切さが問われ続けています。
進路について現実的に考え始める高校の時期でのキャリア教育は、常に変化し続ける社会で生きぬく力を身につける為にも、重要になってきています。職業的、社会的な自立を促すために、日々の教育活動を通してどのようなキャリア教育を実施していけばいいのでしょうか。
奨励賞を受賞した矢板高校の取組み
地域に密着した高校キャリア教育のひとつ、2018年の文部科学省・経済産業省「キャリア教育推進連携表彰」で奨励賞を受賞した矢板高校の取組みをご紹介しましょう。
奨励賞を受賞したのは、矢板高校の特性を活かした地域連携による矢板地区活性化のプロジェクトです。矢板高校では、総合選択制専門学校の特性をいかし、矢板地区を活性化するため、矢板市議会との意見交換や各学科の特色を活かした事業をおこない、地域産業の若い担い手育成に取り組んでいます。
商工会と共同で商品開発「やいた黒カレー」
その取組みのひとつが、商工会の依頼で高校生が考案・開発した「やいた黒カレー」。
矢板市の市制施行60周年を記念して、商工会がカレーの開発を矢板高校に依頼したものです。栄養食物科の生徒がレシピを考案、試食会を開き、商品化されました。
10年前にも商工会からの依頼で「あっぷるカレー」を矢板高校の生徒が開発。レトルトカレーとして商品化され、「やいたブランド」にもなっています。第2弾となったやいた黒カレーは「記念式典の引き出物として活用したい」「このカレーを町のにぎわいにつなげたい」と期待されています。
高校生にとって自分達が考案し、開発したカレーが商品化されるという達成感は、普通の授業ではなかなか味わえない貴重な体験ではないでしょうか。
「地域に必要とされる高校」を目指す矢板高校の取組み
矢板高校では、カレーの開発のほかにもさまざまな取組みを行っています。
「矢板市長と矢板高校生徒との懇談会」
高校に市長を招き、各学科の2年生の代表10名がテーマを決めて意見交換を行いました。
2018年のテーマは「高校生が考える理想の地元」。矢板高校では「地域活動をおこなう上で、改めて自分たちのフィールドを見直すいいきっかけになった」とのことです。
「未来の職業人を育成する事業」
今年から高校生のキャリアアップを目的に、市役所や地元企業、地域のボランティアと電子科の学生が中心となって「ものづくり」をおこなうプロジェクトが開始されました。
2018年度は矢板駅の前に展示するイルミネーションの製作。地元企業主導のもと高校生も活発に意見を出し合い、2か月かけて完成させたそうです。
「出張デイサービスを実施」
矢板高校の各学科25名の生徒が特別養護老人施設を訪問。社会福祉科は健康体操や演舞などのレクリエーション、機械科は車いすのメンテナンス、農業経営科は花の植込みをおこないました。生徒達は、各学科での日々の授業の成果を発揮したそうです。
いかがだったでしょうか?
高校生の時期に実社会と密に関わるチャンスは、職業観を養う上で大きな効果が期待されます。現実の社会の仕組みを感じておくことで、就職時のミスマッチも少なくなることでしょう。
日々の教育活動を通じて、知る面白さや挑戦する楽しさ、仲間と協力する大切さを学ぶ場を与えることが重要です。地域に根差した高校だからこそできる、高校生が地元経済に関わったり、貢献したりするチャンス。地域性や高校の独自性を活かしたプログラムが、これからの高校キャリア教育に求められているのではないでしょうか。