「少子高齢化」の問題が深刻化するなか、重要な働き手である若者への期待が大きくなっています。その一方で、若者が働くことへの不安を抱えている事実もクローズアップされています。
「仕事をすること」は、ただ収入を得るためではなく、社会とつながり自己実現を可能にします。高校在学中など学生時代の早い段階で、働くことの価値をキャリア教育を通して学んでいくことが求められています。
今回は、高校におけるキャリア教育の事例として、2015年の岡山ESD(持続可能な開発のための教育)アワードで岡山地域賞を受賞した岡山県立和気閑谷(わけしずたに)高等学校の取組みを紹介したいと思います。
和気閑谷高等学校の取組み
岡山地域賞を受賞した岡山県立和気閑谷高等学校の「和気閑谷高校魅力化事業」は、「少子化による町の衰退を防ぐには教育の充実が必要不可欠だ」という和気町と、特色のある活動によって高校の魅力化を推進したい和気閑谷高校が協力し、2013年度から開始された取組みです。
和気閑谷高校では、教育の中で、町の役場や教育員会、商工会や地域の人達と協働することをとおして高校生に地域への愛着をもたせ、地域コミュニティーの中心的な担い手になる人材を育成する働きかけを続けています。同時に、地域を活性化させ、さらには高校の魅力をUPさせることに繋がっています。
探求学習と新しいつながり
和気閑谷高校では、地域について学ぶ「閑谷學」に力をいれています。「閑谷學」とは、課題について解決策を考え、実践する探求学習のこと。和気町全体が学習の場になり、講座の講師はすべて地域の人が務めているそうです。
また、町の教育委員会や小中学校と協力し、高校生が小中学生の先生として教える取り組みも行っています。そのひとつが、小中学生が英語を楽しめる授業を高校生が企画し実践しているEnglish Camp。さまざまな取組みを通じて、高校生の自己肯定感、コミュニケーション力や地元愛を高めると同時に、小中学生にとっても身近なお手本となり、新しいつながりが芽生えています。
探求型インターシップと「WAP」
就職を希望する高校生は、全員が2年生の時に地域の企業でのインターシップを経験します。特徴は「探求型インターシップ」であること。職場体験だけにとどまらず、課題について自ら仮説を立て、検証や解決までをまとめて発表することで、体験を確実に自分のものにするカリキュラムになっているとのことです。
また、和気町を観光事業から地域を活性化することを目的に、観光スポットをイラストで紹介したマップ「WAP」を生徒会発案で和気町補助金等交付事業に応募するなどの試みも行っています。
いかがだったでしょうか?
様々な機会を子供達に与えることができる仕組みは、キャリア教育が目指すものであり、生徒の職業観のみならず、自己肯定感や責任感の育成を助けることに繋がります。さらに、これらの活動が、地域に住む人々の意識を変えるきっかけにもなっており、町全体の活性にもつながっています。
和気閑谷高校の取組みは、地域と学校がお互い協力しあい、町ぐるみでキャリア形成を支援する仕組みが整っている、良い例になるのではないでしょうか。