食品業界はその名前の通り、「食品」を扱う業界です。スーパーやコンビニで売られている、私たちの暮らしに直結する商品作り。産業としてとらえると、どのような姿をしているのでしょうか。いつもと少し違う視点でながめてみましょう。
「加工」を行う食品メーカー
食品は、食材を加工することで保存や安定供給が可能になります。日本の食品メーカーの製品は、高度な製造技術と品質管理により抜群の安全性を誇るのが特徴のひとつです。
食品業界全体の規模は2005年以降、ゆるやかに増加を続けています。景気の波にあまり左右されない安定性と堅実さをあらわしており就職先として人気が高いのもうなずけますね。
とはいえ、国内市場は人口が減り高齢化するのにともなって小さくなっていくことは避けられません。輸入品との競争も激しくなることが見込まれ、食品業界は大きな転機を迎えつつあります。
食のグローバル化
2013年に「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録されました。世界では「おいしくて安全、健康的」な日本食ブームが加速しています。大手の食品会社では、国外で現地の生活習慣や味の好みを調査。日本製品の良さを残しながら、受け入れてもらう工夫をし活発に海外への展開をしているところです。
農林水産省によると、世界の食の市場規模は2009年の340兆円から2020年には2倍に伸びると予想されています。特に中国・インドを含むアジア全体は巨大な市場へと成長中です。
味の素やキッコーマンは現地に子会社を作り、増収をめざしています。シェア獲得競争はすでに始まっており、国家レベルで加工食品の輸出や現地での展開を支援しているのです。
日本国内市場
人口減少・高齢化がすすむ国内市場、規模は横ばいもしくは縮小していきます。モノがあふれた先進国では量よりも質が注目されるようになってきました。消費者のニーズは多様化し、短いサイクルで移り変わっていきます。
「価格」「味の良さ」「品質の高さ(鮮度、安全性)」といった基本的なものから「流行」「限定感」「希少価値」「ブランド」「栄養素」「利便性」など食品が選ばれる基準は極めてさまざまです。
小さくなりつつある国内市場ですが、食品業界では売上げの大半を日本国内にたよっている企業が多いのが現実。食品メーカーは次から次に出てくる消費者のニーズを先取りし、いかに短い期間で商品化し、生産するかを競い合っています。
食品メーカーに影響するもの
食品会社の業績に大きく作用するもののひとつは為替。円安、円高…よく聞く言葉ですが食料品の価格にとても関係があります。原材料の多くを輸入に頼っている食品業界にとって、2013年に入ってからの急速な円安は、大きな逆風となりました。
醤油、ソーセージ、ハム、ジャム、冷凍食品など原材料の占める割合の高い製品は、輸入のコストがあがったことで相次いで値上げをすることになりました。
TPPって?
2015年10月に大筋合意したTPP(環太平洋パートナーシップ協定)が食品業界に与える影響も極めて大きいものです。関税が減ったり無くなったりすれば、原料を輸入して加工する業種ではより安く製品づくりができるようになり利益をあげやすくなります。
一方で、国産食品を主に扱うメーカーにとっては、海外勢との価格競争にさらされることになります。TPPは今後の食品業界の明暗を左右する要因となるものなのです。