優秀な高校生を人材として欲しい。と思うのは当然のこと。それは、企業であっても、自治体であっても同様です。そういった企業や自治体はどんな工夫をしているのでしょうか?今回は、優秀な高校生を採用するために新しい試みをしている奈良市役所の採用方法をご紹介します。
「働きながらの大学進学を応援します」
奈良市役所の新しい試みは、職員として採用してから、働きながら大学に進学するという新しいキャリアモデルを提示していることです。高校を卒業してからすぐに就職をすることに不安を感じている高校生も多いはず。「やはり大学にはとりあえず行った方がいいのでは」と、学業が優秀な学生であればこそ、迷いが生じる部分です。そんな大学進学も視野に入れられる優秀な高校生を、奈良市としても採用したいところ。
そんな高校生に「奈良市役所に就職して仕事をしながら、本当に大学で学びたいことが見つかった時に休暇をとって進学したらいかがですか?応援しますよ!」と新しい可能性を提示しています。これは今までにはない斬新な試み。高校生に向けて、「複数年単位で取得できる休暇や休職があります」とアピール。さらに「大学卒業資格の取得に対する助成金制度 」もあるそうです。
大学進学をあきらめている高校生にも
また、大学進学が可能な学力を持ちながら、様々な事情で進学をあきらめざるを得ない高校生に「生活を安定させることで、一旦落ち着いて自分自身の未来をしっかりと考えることも選択肢の1つ 」と提案しています。高校生は、まずは収入を得て落ち着いてからゆっくりと将来の計画を立てることができ、奈良市役所は将来性のある優秀な人材を早い段階で獲得することができるという、お互いに利点のある方法です。優秀な人材だからこそ、市役所も大学で学んで新たな知識やキャリアを身につけて戻ってきてほしいという本音でしょう。
FAQで高校生の不安を払拭
とはいえ、高校を卒業してすぐに就職するのは、大学卒業後に就職するよりもいろいろな面で不利なのではないか?と、高校生が思うのは当たり前のことです。そこで、奈良市役所はFAQ形式でその不安を払拭。
Q.「大学卒業後に公務員になった方が給料が高くなりますか?」
→A.初任給は卒業区分によるため、大学卒業区分の方が高くなるが、生涯賃金や年金に関しては勤続年数が長くなる高校卒業者の方が高くなることもある。
Q.「大学卒業後に公務員になった方が昇進が早いですか?」
→A.高校卒業区分であることで、大学卒業区分よりも遅くなることはない。
Q.「大学卒業区分と高校卒業区分の試験倍率は異なりますか?」
→A.採用試験の倍率も高校卒業区分は、大学卒業区分の約半分程度で、高校卒業区分に比較的大きく開いている。
高卒だからといって将来のステップアップや収入に制限がかかることはない、とはっきりと言い切る姿勢は、高校生に安心感とやる気を与え、優秀な受験者を呼び込むことにつながります。
「志望者全員と会う」
以前の選考方法では一次試験で総合能力検査と書類選考を実施していましたが、面接に変更。集団面接でまずその人となりを見ることから始めます。書類ではわからない部分をまず会って見極めたいという、奈良市役所の思いがあるのではないでしょうか。学歴ではない完全人物本位の採用。高卒採用のルールの中で民間企業がすぐに真似することは難しいですが、就職後の学びやキャリアアップを支援し期待する、というメッセージは優秀な高校生に訴求するはずです。「高校生を採って育てる」採用、増えていくのかもしれません。