効果的なキャリア教育を創る実践のベースとなる情報をご紹介するシリーズ。前回は「生徒たちの今を語るデータ」をとりあげました。2回目は現在のキャリア教育をめぐる動向に注目します。
どう違う?進路指導とキャリア教育
進路指導は「卒業時の進路をどう選択するかを含めて、(中略)どういう人間になり、どう生きていくことが望ましいのかといった長期的展望に立っての人間形成をめざす教育活動である」(進路指導の手引きー個別指導編」昭和55年)などとして位置づけられてきました。
進路指導とキャリア教育、狙いにおいてはほぼ同じと言えるでしょう。ただ、進路指導が中学校や高校における教育活動であると見なされてきたのに対し、キャリア教育は幼児、初等教育段階から成人をも対象としており、この点が大きな違いであるといえます。
進路=出口?の反省
また、実際に行われてきた進路指導はその理念を必ずしも反映したものとはいえませんでした。体系だった指導や、一人一人の発達を長期的視点から支援するといった意識や姿勢が希薄であることなどが指摘されています。
入学試験や就職試験 に合格させるための支援や指導に偏った取組み、いわゆる「出口指導」はその典型でしょう。卒業直後の行先を確保するだけでなく、社会で生活を築き、自立して生きていくために何を学ぶべきかという視点を持った指導が必要であるといえます。
大学進学をめざす生徒に対しても「大学の向こうにある社会」を強く意識させる取組みが求められます。進路選択の先送りや将来設計のあやふやな進学をする生徒が増加。大学中退者は約10%にのぼり、その半数は非正規雇用となっているのが現状です。
能力と態度を育てる
平成23年中央教育審議会はキャリア教育を「一人一人の社会的・職業的自立に向け、必要な基盤となる能力や態度を育てることを通して、キャリア発達を促す教育」と定義しました。これはキャリア教育のとらえ方の誤解やばらつきを是正し、本来の理念を理解・共有するために示されたものです。
キーワードは「能力と態度の育成」。教育活動の評価は、やるべきことをやったかどうかの「アウトプット評価」から、ちゃんと力がついたかどうかの「アウトカム評価」を行い、成果の検証や改善を行っていくことが重要です。
「キャリア発達」の意味も確認しておきましょう。「社会の中で自分の役割を果たしながら、自分らしい生き方を実現していく過程」。これは子どもだけのものではありません。人が生涯を通じ、段階をおってたどるものであり、各段階で取組むべき課題があります。
進路指導を含むキャリア教育は若者をめぐる社会問題に直接アプローチする重要な取組みです。子どもたちが「生きる力」を身につけ、直面するさまざまな課題に柔軟かつたくましく対応できるようにする教育が強く求められています。